本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

Wimbourne Books 怪奇小説アンソロジー・シリーズ

The Wimbourne Book of Victorian Ghost Stories: Volume 1

作品データ

編集: Alastair Gunn
出版社: Wimbourne Books
日本語版:なし
ジャンル:怪奇小説アンソロジー

全シリーズ:

www.amazon.co.jp

概要と感想

 Wimbourne Booksという出版社が手がけている、ヴィクトリア朝の怪奇小説アンソロジー・シリーズ。現在、電子書籍で15巻(!)まで出ています。全部読むのはかなりの根気が必要……。第1巻は、1852年から1901年までに発表された女性作家の作品を収録。

◇Vol.1の収録作品

The Old Nurse's Story  by Elizabeth Gaskell
The Last House in C--- Street by Dinah Maria Craik
My Friend's Story by Catherine Ann Crowe
The Cold Embrace by Mary Elizabeth Braddon
How the Third Floor Knew the Potteries by Amelia B. Edwards
Wrath-Haunted by Isabella Banks
The Ghost in the Cap'n Brown House by Harriet Beecher Stowe
The Man with the Nose by Rhoda Broughton
Seen in the Moonlight by Ellen Wood
The Secret Chamber by Margaret Oliphant
The Open Door by Charlotte Riddell
In the Dark by Mary E. Penn
The Haunted Organist of Hurly Burly by Rosa Mulholland
The Story of the RipplingTrain by Mary Louisa Molesworth
A Wicked Voice by Vernon Lee
The Trainer's Ghost by Lettice Galbraith
How He Left the Hotel by Louisa Baldwin
The Picture on the Wall by Katharine Tynan
In the Dark by Mary E. Penn
The Woodley lane Ghost by Madeline Vinton Dahgren
The Ghost of the Belle-Alliance Plantation by Lilian Giffen

 

 このなかで翻訳が見つかったのは、
・GaskellのThe Old Nurse's Story(老いた子守り女の話)
・CraikのThe Last House in C--- Street(窓をたたく音)
・BladdonのThe Cold Embrace(冷たい抱擁)
・EdwardsのHow the Third Floor Knew the Potteries(第三の窯)
・BroughtonのThe Man with the Nose(鼻のある男)
・LeeのA Wicked Voice(悪魔の歌声)
・BaldwinのHow He Left the Hotel(このホテルにはいられない)


「老いた子守り女の話」や「鼻のある男」は、怪奇アンソロジーの常連ですね。Vernon Lee(本名はViolet Paget)は、フランスに生まれ、イタリアをはじめヨーロッパに長く暮らし、芸術にも造詣が深かった作家のようです。音楽がテーマの「悪魔の歌声」は真骨頂という感じで、耽美でドロドロした雰囲気もよかった。『教皇ヒュアキントス』という作品集が、唯一まとまった作品が読める翻訳書のようです。

 

 既読の作品と、翻訳で読んだものを含めると、未読だったのは8作ほど。残念ながら、そのなかにこれぞ!という作品はありませんでした(このシリーズはお値打ち価格なので、気になったものだけ読む、といった読み方も気軽にできますが)。
 やや長めの作品が多く、途中で飽きてしまい、最後まで読み切れなかったものもありました。冗長で詰め込み気味に思える作品は、18世紀末から19世紀の頭にかけて流行していたゴシック・ロマンスの影響でしょうか。ゴシックを語れるほど詳しくありませんが、19世紀後半でもまだ同じ流れを引きずっている作家もいたんじゃないかと。短編はもうちょっと切れと濃さが欲しいかな、というところ。

 このアンソロジーにも入っていますが、『アンクル・トムの小屋』のストウや、『かっこう時計』のモールスワースといった日本では児童文学作品が知られている作家も、怪奇小説を残しています。この時代の女性作家は、怪奇小説を好んで書いていたというより、当時人気だったジャンルなので原稿料目当てに(生計のために)書いた、という背景もあるようです。

 

   ひたすらクラシックな怪奇アンソロジーを読んでいるのは、著作権が切れている作品のなかから翻訳できそうなもの(底本)を探すという下心もあるからなのですが、4、5冊アンソロジーを読んでみて、早くもお腹いっぱいになってきました。訳してみたい作品リストはかなり充実しましたが、まだまだ未訳のおもしろい作品が山とあるでしょうし、ぼちぼち発掘を続けていければと思っています。

 

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(お宝さがしの旅は続く……)