本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

食べることは、家に帰ること Tiny Moons

Tiny Moons: A Year of Eating in Shanghai

作品データ

著者:Nina Mingya Powles
日本語版:未訳
ジャンル:エッセイ、自伝

著者のサイト: 

www.ninapowles.com

 

出版社の作品紹介ページ:

theemmapress.com

 

概要

 ニュージーランド人と中華系マレー人を両親にもつ、詩人で作家、ZINEメーカーの著者による自伝的フードエッセイ。留学生として上海の大学で学んだ1年間の記録と、幼いころから親しんできた食べ物やその思い出が綴られている。読んでいるとお腹がすいてくること間違いなしの一冊。

感想

 フードエッセイはなじみのあるジャンルではないのですが、出版社(The Emma Press)のサイトをながめていて、表紙のイラスト(餃子かな?)に一目ぼれ。思わずイギリスから取り寄せ、待つこと数週間……。ようやく届き、読みはじめてすぐにひきこまれました。単なる「食べ物紹介本」ではなく、著者が自分のルーツや文化のこと、孤独を楽しむこと、食べること、言葉を学ぶことといった、いろんなことを食べ物を通して見つめ、ときにユーモラスに、ときにシリアスに語っています。Ninaさんの言葉の選び方や文章の運び方がとても好きになりました。詩人ということもあるのか、すーっと流れるように頭に入ってきて、読んでいると心が落ち着いてきます。

 Ninaさんは、幼いころから世界のあちこちで暮らしてきたそうです(どこかのサイトに、両親が外交官と紹介されていました)。生まれ育ったニュージーランドと、母親の実家があるコタキナバルが一番なじみの深い場所になるけれど、自分にとっての故郷は世界中に散らばっているとNinaさんはいいます。でも、餃子やワンタン、バナナフリッター、油そば(葱油拌麺)などなど、記憶と結びついている食べ物を食べると、家に帰った気分になれる。FoodがHome。だから世界のどこにいても、ひとりでいても、Homeを感じることができるんだと。
 とても素敵な考え方だと思いました。食べ物の記憶は、本能というか、ものすごく深いところで自分や家族、土地や文化と結びついている。食べてきたものが人を作る、育てる、とはよくいいますが、食べることは、「どう生きてきたか」を思い出せる行為でもあるのかな。本を読むことも同じですね。

 とにかく、出てくる食べ物がどれもこれも本当においしそう。いわゆる飲茶メニューがずらっと並んでいて、いますぐ全部食べたくなりました!

 

 この作品を出版したThe Emma Pressは、イギリスの独立系出版社。詩集や絵本、短めの小説(パンフレット)を中心に、良書を精力的に世に送り出している、個人的にとても注目している出版社です。どの本もカバーがカラフルで、ものすごくかわいい! 大手出版社のがっちりした装丁の本もいいですが、Emmaさんの本はシンプルだけど手作り感が伝わってきて、愛情をこめて丁寧に作られているのがわかります。気になった絵本と詩集もあわせて、直接送っていただきました(Tiny MoonsはAmazonでも買えるようです)。そちらを読むのも楽しみです。

  

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(餃子をひたすら包みたいという衝動にかられました)