本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

白銀のアラスカに現れた少女 The Snow Child

The Snow Child

(こちらの表紙も素敵)

作品データ

著者:Eowyn Ivey
日本語版:なし
ジャンル:フィクション
舞台:アメリカ アラスカ州
作品の雰囲気:ややシリアス
Audible:なし


著者のサイト:Eowyn Ivey

概要

  舞台は1920年代のアラスカ。子どものいない夫婦、ジャックとマーベルは、アラスカの開拓地に移住する。マーベルは出産時に子どもを亡くすという経験し、悲しみを抱えたまま、長い年月を過ごしていた。そこで、新天地で心機一転、人生を再スタートするつもりでアラスカに移住したのだが、過酷な自然や開拓の厳しさのなかで、夫婦の心はますます離れていく。
 そんな重苦しい空気がただようアラスカでの生活だったが、初雪が降ったある日、童心に返ったふたりはSnow Childを作る。この子は女の子だと、赤いミトンとマフラーを着せてやるマーベル。すると、森の中に、赤いミトンとマフラーをまとい、透き通るような肌と青い目をした、金髪の少女が現れたのだ。少女は、おとぎ話に出てくるSnow Maiden(ゆきむすめ)のように冬の寒さを気にすることもなく、野生の生き物のようにしなやかに、風のように森の中を駆け巡る。

 この不思議な少女と夫婦との交流をベースに、マーベルの心の動き、そして強い女性へと成長していく過程が、美しい文章で語られた物語。 

感想

 2013年ピューリッツァー賞フィクション部門の最終候補にもなっている作品です。50章以上という長さに読み切れるのか心配でしたが、読んでいくうちに先が気になって、気づいたら数日で読み切っていました。 

 白銀のアラスカが舞台ということもあり、幻想的な雰囲気ではあるのですが、ファンタジーというよりもヒューマンドラマでしょうか。少女はいったい何者なのか、というミステリーな要素もあるものの、過酷な環境で生きる人々の人生が丁寧に描かれています。自然描写も緻密で生き生きとしていて、とくに野生動物の描写には心奪われました。キツネ、オコジョ、ライチョウ、グズリといった、アラスカならではの生き物たちも登場します。作家自身がアラスカ在住のようなので、どうりでリアル。

 家族や親子のあり方、生きるうえでの選択、何を大切にするかといった、根底にあるテーマはひじょうに普遍的です。ラストは余韻を残す終わり方で、好みが分かれるかもしれません。登場人物は少なく、それぞれがしっかりと描きこまれています。いろんな角度から読めるので、精読や読書会に向いている作品だと感じました。この作品で、読書会をやってみたい……。

 

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(雪は幻想的できれいですが、寒いのは苦手。)