本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

Monster, She Wrote チャレンジその7:ポーリーン・E・ホプキンス

 Mosnter, She Wroteチャレンジその7は、黒人女性作家ポーリーン・E・ホプキンス。

www.bookdog.me

Of One Blood: Or, the Hidden Self

archive.org

作品データ

著者:Pauline E. Hopkins
ジャンル:怪奇小説
日本語版:なし

 Monster, She Wroteには、名前を聞いたこともない作家が多く紹介されているのですが、ポーリーン・ホプキンス(Pauline E. Hopkins)もそのひとり。ボストン生まれのアメリカ人で、1900年から5年ほどの間に、ロマンス小説や怪奇ものの短編、エッセイや伝記を数多く残しています。The Colored American Magazineという雑誌の寄稿者、編集者をつとめ、ジャーナリストとしても活動していたホプキンス(俳優をしていたこともあるそうです)は、「世紀の変わり目に最も活躍したアフリカ系アメリカ人女性作家」であり、その功績は大きいといいます。とはいえ、作家業で身を立てるのは当然難しく、日中は速記者としてマサチューセッツ工科大学(MIT)などで働いていたんだとか。
 ホプキンスは、差別や暴力など、アフリカ系アメリカ人のおかれた厳しい状況を登場人物に投影した小説を描き、世に認められるようになります。一方で、超自然というテーマを好んだのか、当時、人気を集めたというOne Bloodは、怪奇ムード全開の作品です。あらすじを読んだ限りの情報ですが、主人公は医学生(男)で、アフリカ系アメリカ人の血が流れていますが、肌の色が薄く、ルーツを隠して生活しています。超自然に興味を持ち、催眠術で死者を蘇らせ(!?)、エジプトを探検して隠れた超文明を発見し、策略によって恋人を奪われ、魔術を駆使して復讐を果たし……という物語。雑誌(The Colored American)の連載小説だったせいか、ドラマティックで目まぐるしい展開です。終盤、親友だと思っていたのに恋人を奪った男が、実は母親の違う兄弟だった、という衝撃の事実がわかるのですが、これがタイトルのOne Bloodにつながっているようです。ルーツをたどれば、人類はみなひとつ、という意味も読み取れます。

 One Bloodはいずれ読んでみたい作品ですが、ホプキンスの短編を見つけたので、そちらを読了しました。Talma Gordonという作品です。

 

作品データ

著者:Pauline E. Hopkins
ジャンル:怪奇ミステリ
日本語版:なし

 この作品、アフリカ系アメリカ人作家によるミステリとしては、最初期のものに数えられるようです。語り手(主人公)は医師で、自宅に同業者を招いて研究会を開いていました。人種についての討論を聞いていた主人公は、意見を聞かれ、その裏づけとして、自らの体験談を語りはじめます。昔、知り合いの家族に、美しい娘がいました。娘は先妻の子で、父親が再婚し、継母との間に弟が生まれると、父と娘の関係はしだいに険悪になります。財産のほとんどを息子に譲ると、父親が遺言を変更しようとした矢先、その父と継母、幼い弟が惨殺されるという事件が起こるのです。当然、娘に疑いがかかりますが、証拠不十分で釈放され、国外で暮らすことに……。終盤、誰が犯人なのかという謎が、意外な形でわかります。そして、なぜ父親が娘を排除しようとしたのかも。そこには、作者ホプキンスのルーツが深くかかわっています。ラストに粋な展開があって、筋立てもテンポもよく、ホプキンスの筆力がうかがえる良作だと思います。訳したい作品リストに入れました!