本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

Monster, She Wrote チャレンジその4:ゴシック・フィクションの生みの親たち

  Mosnter, She Wroteチャレンジその4は、ゴシック・フィクションの生みの親である女性作家たち。

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 Monster, She Wroteでは、18世紀から現代まで、ほぼ時代にそって女性作家が紹介されています。このチャレンジをするにあたり山場だと思っていたのは、第1部 The Founding Mothersで紹介されている「18~19世紀のゴシック・ロマンス作家たち」でした(序盤にいきなり山場……)。ゴシック・ロマンスは話が長いうえに、翻訳が出ていないものが多い! 原書ではとても読めない!(いや、時間と根気があれば……)という言い訳のもと、3人の作家とその作品をまとめてお茶を濁しておきます。

 

◆Regina Maria Roche(レジーナ・マリア・ローシュ)

 

  当時はひじょうに人気があった作家らしく、The Children of the Abbeyという作品は、アン・ラドクリフThe Mysteries of Udolphoよりも売れたんだとか。Clermontはゴシック・フィクションの典型とも評される作品で、Jane AustenNorthanger Abbey(ノーサンガ・アビー)では、登場人物のイザベラが愛読している本の一冊として紹介されています(オースティンはあくまで「低俗な本」というニュアンスで取りあげたようですが)。あらすじによると、父親とふたり、のどかな田園生活を送っていた主人公Madelineが、怪しげな人物の訪問を受け、殺されそうになったり、父親の謎の過去が明らかになったり、ロマンスが芽生えたりする話……ざっくりまとめただけでも、盛りだくさんすぎる。Madelineは色白で美しく、詩や歌を愛する高潔な女性という、ゴシック・ロマンスの典型的なヒロイン像といった感じ。

 こちらのThe Complete Northanger Horrid Novel Collectionは、イザベラがNorthanger Abbeyのなかで名前をあげた8つの作品がまとめられたコレクションです。The Mysteries of Udolphoも収録されています。

 

◆Mary Anne Radcliffe(メアリー・アン・ラドクリフ)

 

 あれ、アン・ラドクリフ? と戸惑いました。生没年もよく似ているのですが、まったくの別人です。ただ、人物像については研究者もよくわからないらしく、この名前も本名かどうかはっきりしないとのこと。フェミニストの活動家でもあり、ノンフィクションや自伝のほか、(当時の)センセーショナル小説を何作か残しています。なかでもManfroné, or, The One-Handed Monkが代表作とされています。主人公のヒロインRosalinaは襲われ(犯人は逃げるときに手!を落としていく)、囚われの身となり、遺産を横取りされそうになり、そこにヒーローが現れて恋に落ち……という、こちらもコテコテのゴシック・ロマンス。いや、ゴシック・スプラッター・アクション・ロマンス? なんだか、ものすごく読んでみたくなりました……。
 主人公のRosalinaという響きからしてロマンティックな名前は、ゴシック・ロマンスのヒロインによくある名前だそうです。

◆Charlotte Dacre(シャーロット・デイカー)

 

 Rosa Matilda(ローザ・マチルダ)というペンネームでも執筆し、10代から作家として活動していたデイカーも、これまたセンセーショナルでダークな作品を残しています。Zofloya; or, The Moorが代表作とされ、そのスキャンダラスな内容は文壇を騒がせたといいます(とはいえ、売れに売れてドイツ語やフランス語にも翻訳されたのだとか)。あらすじを読んだだけでも、愛の逃避行、毒殺、盗賊団、サタンも登場し(もちろんゴシック・ロマンスのお約束のお城も出てきます)、ヴィクトリア朝版ソープオペラといいたくなるような愛憎劇が繰り広げられる話でした。デイカー自身も波乱万丈な人生を送っており、その経験が作品にも反映されているといえそうです。

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 チャレンジその1から4までは、Monster, She Wroteの第1部The Founding Mothers各章で取りあげられていた作家・作品を見てきました。読めなかった作品も多いですが、当時活躍していた女性の作家について知ることができたのは収穫です。

 次はお楽しみの第2部Haunting Tales。いよいよヴィクトリア朝時代の、怪奇小説らしい作品が登場します。ハロウィーン・シーズンに向けて、チャレンジも盛り上がる……かも?

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(建築様式が時代に合ってるかはわかりませんが、ゴシック・ロマンスの舞台でおなじみ、辺鄙なお城のイメージ)