本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

Monster, She Wrote 女性怪奇作家伝記集

Monster, She Wrote: The Women Who Pioneered Horror and Speculative Fiction

作品データ

著者:Lisa Kroeger, Melanie R. Anderson
ジャンル:ノンフィクション(伝記集)、手引書
日本語版:なし

Audible: 

www.audible.com

概要

 文学における「ホラー」や「スペキュレイティブ・フィクション」の系譜は、女性作家の手によって始まった。18世紀、アン・ラドクリフが『ユードルフォの秘密』でゴシック小説の幕を開け、19世紀にメアリー・シェリーが世界一有名なモンスター「フランケンシュタイン」を生み出すと、ヴィクトリア朝の女性作家たちはこぞってゴースト・ストーリーを書いた。その後に続くパルプ・マガジンやペーパーバックの隆盛、現代のベストセラー・リストを賑わすサイコスリラーも、女性作家たちの活躍に負うところが大きい。だが、彼女たち自身については、多くが語られていない。本書は、18世紀から現代まで、恐怖をテーマに物語を紡いできた女性作家たちにスポットライトを当て、その人物像や人生を掘り下げたものだ。作品紹介やリーディング・リストも充実の内容で、このジャンルの手引書としても便利な一冊。

感想

 昨年以来、いちばん入れ込んでいる本は何ですか、と聞かれたら(聞かれることはなさそうですが)、即答できます。この本だと。怪奇小説、それも女性作家の作品について知りたいと思っていたわたしにとって、まさにバイブルとなる一冊です。なにがすごいかというと、取り上げられている作家の数が半端ない! 軽く50人は紹介されているでしょうか。それぞれの生い立ちや作家になるまでの経緯、代表作、おすすめの作品、関連情報などなど、充実の内容で、著者の熱意と労力がしのばれます。こんなすばらしい本を世に送り出してくれてありがとうと言いたい(絶賛)。

 仲間と取り組んでいる翻訳同人誌では、ホラー担当(?)として、ヴィクトリア朝の女性作家イーディス・ネズビットの作品を訳してきました。怪奇小説は、同人誌を始める前までは、あまり読んでいませんでした。怖いのが苦手で……。ですが、怪奇小説は怖いだけじゃないということを、ネズビットや同時代の女性作家の作品を通して知りました。実際、ヴィクトリア朝の怪奇小説はそれほど怖くありません。登場人物の行動や情景描写から、時代の雰囲気や文化が味わえるのが醍醐味といってもよさそうです(もちろん、背筋が凍るほど怖い作品もあるでしょうが)。作家の境遇が作品に反映されていることもしばしばで、このMonster, She Wroteはその背景情報を提供してくれます。

 名前を聞いたことも、作品を読んだこともない作家がたくさん紹介されていて、とにかく全部読みたい! ということで、Monster, She Wroteチャレンジを無謀にも始めることにしました。この本に掲載されている作家の作品(ゴシックロマンスを原書で読むのはきつすぎる……ので、短編、翻訳書メインで)を順番に読んでいこうかなと。達成できるかどうかはわかりませんが、楽しく、気長に続けていればと思っています。

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(わんこ&にゃんこモンスターが登場する話もある……かも?)