本と犬

洋書とオーディオブックについて語るブログ。最近は怪奇小説が多め。

古い屋敷には、謎と恐怖が渦巻いている Home Before Dark

Home Before Dark

作品データ

著者:Riley Sager
日本語版:なし
ジャンル:ミステリー、サスペンス
舞台:アメリカ バーモント州

Audible: 

www.audible.com


著者のサイト:

www.rileysagerbooks.com

概要

  マギーは作家の父ユアンを亡くし、人里離れた森に建つ広大な屋敷ベインベリー・ホールを相続する。そこは幼いころ、両親とともに暮らした家だった。ベインベリー・ホールは、実は住人をことごとく不幸にするといういわくつきの屋敷で、ユアンたちも引っ越してわずか数週間で逃げ出していた。そのときの体験を描いた「実録」小説が世界的なセンセーションを巻き起こし、ユアンは一躍ベストセラー作家となったのだ。だが、マギーには当時の記憶が一切なく、すべては父親の作り話だと思っていた。ふたたびあの屋敷に足を踏み入れるまでは……。 

感想

 ゴシックテイストのホラー・ミステリー。オーディオブックで読了。絵にかいたような「幽霊屋敷」を舞台に、何が真実で、何が嘘(フィクション)なのか、気の抜けない展開で、最後はあっと驚かされました。マギー視点の章と、ユアンによる小説『ハウス・オブ・ホラー』(引っ越した日から最終日の20日目まで)の章が交錯しながら話が進みます。オーディオブックではマギーとユアンのナレーターが別々なので、混乱することなく、スムーズに話に入っていけます。

『ハウス・オブ・ホラー』のなかで、ベインベリー・ホールでは、何人もの若い娘が命を落としてきたという暗い過去が語られます(怪奇小説として単独で読んでも、おもしろい話だと思います)。その呪いが幼いマギーの身にも降りかかり、一家は命からがら屋敷を去った、という物語になっているのですが、マギーは信じていません。父親のことを愛してはいましたが、売れる本を書くための嘘だと考えていたのです。さらに、『ハウス・オブ・ホラー』が話題を呼んだせいで、ユアンらは有名人となりますが、マギーは「あの幽霊話の子」として周囲から好奇の目で見られ、普通に扱ってもらえなくなり、結局両親は離婚するなど、散々な人生を送ってきたという苦い思いも抱えています。
 相続した屋敷をリノベーションして売りに出すため(マギーの生業でもある)、さらには、暗い過去と向き合うため、マギーはベインベリー・ホールを訪れますが、それがパンドラの箱を開くことになるのです。屋敷から白骨化した女性の遺体が見つかるあたりから、一気にミステリの様相を呈していきます。この女性は誰なのか。なぜ殺され、遺体がベインベリー・ホールに隠されていたのか。忌まわしい屋敷を手放すことなく、年に一度、ひそかに訪れていたという父ユアンは、いったい何をしていたのか。マギーはユアンへの疑いをぬぐいきれませんが、犯人は意外なあの人でした! マギー自身と事件のかかわりや、ユアンが『ハウス・オブ・ホラー』を書いた、予想をはるかに超える理由も明らかになります。終盤は見事なひねりが複数待っていて、さまざまな伏線もきちんと回収され、著者の構成のうまさを感じました。

 ちなみに、ベインベリー(baneberry)は実に強い毒性がある植物で、屋敷周辺に群生しているという設定。この毒が過去の悲劇にも影を落とし、マギーも危機に追い込まれます。もうひとつ、キーワードとなるのがアモワール(衣装だんす)で、幼いマギーはそこから「ミスター・シャドウ」や「ミス・ペニー・フェイス」といったゴーストが出てくると両親に訴えます。ユアンらは、想像力が豊かなマギーのイマジナリー・フレンドだと決めつけますが、実はそれは空想でも悪夢でもなく……。こうした細かい要素の使い方も印象的な作品です。乾いて澄んだ晩秋の空気になじむ、ひやりとした読後感が味わえる作品です。

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(アモワールって、こういう感じでしょうか? 確かに、よからぬものが出てきそうな……)